泪〜ナミダ〜



今日も又、尊い命が犠牲になる。
たとえそれが敵国の命であったとしても。
自分がその命を奪ったとしても。
罪の意識に嘖まれながらも、又明日も剣を振るう。
そうしなければ、大切な命は守れないから。
相手にだって守りたい命があるから戦う。
想う事は同じ。


自分は明日、ここにいないかも知れない。
お前も明日、ここにいないかも知れない。


だからこそ。
その存在を確かめたかった。
自らの腕に抱き、その熱に触れたかった。




グレイは一人、皆と離れて川辺に腰を下ろし、その流れる河をじっと見つめていた。
変わらず流れ続けるその様子に、なぜか心が安らいだ。

「おつかれ。」

足音もなく突然声を掛けられて、グレイははっとして振り返った。
「驚いた?」
そこにはビールを片手ににこりと微笑むロビンの姿があった。
「その突然声を掛けるのやめろって言っただろう。」
グレイは口ではそう言いつつも口元に笑みを浮かべる。
「だってさ、グレイが性に合わずしんみりと河なんか眺めているから…。邪魔しちゃ悪いと思って。」
「そう言うけど、既に邪魔してると思うぜ。」
グレイが毒づくが、ロビンは悪びれた様子もなく、ごめんと一言言うとグレイの隣に腰掛けた。
そしてはい、とグレイにビールを差し出すと嬉しそうに笑う。
「これ、ビールね。今日はトクベツに一人一本支給だって。」
お酒なんて久しぶりだね。そう言ってロビンは嬉しそうにビールを開けた。
「ほら、グレイも冷えてるうちに飲もうよ。」
ロビンは軽く一口流し込むとグレイの横顔をのぞき込んだ。
「あぁ。」
グレイは短く返事を返すと一気に半分ほど流し込み一息ついた。
「…うまい。」
再びごくごくとビールを煽る。
「あーあ。そんなに一気に飲んで…。一本しかないんだからもっと味わって飲まないと。」
「一人一本なんてしみったれてるぜ。まったく…。」
グレイはぶつぶつと文句を言いながら既に空になったビールを足下に投げた。
「しょうがないよ。食べる物さえなくて飢えに苦しんでいる人達がいるんだよ。ご飯も食べれてビールまで飲めれるなんて、ちゃんとミラ様にお礼を言うくらいの気持ちでないと。」
そう言うロビンの顔をグレイはにやにやと見つめた。
「オマエいつからそんなに信心深くなったんだ?」
「は?」
「どこぞのシスター様達みたいなこと言いだして。」
「そう言う事言うんだ…。」
ロビンはぷいとグレイから視線をそらせると、ビールを一気に煽る。
「おいおい、無理すんなよ。」
そう言うグレイの顔を横目でちらりとにらむと、更に一気にビールを流し込んだ。
そんなロビンの様子に苦笑を漏らしつつも、グレイはため息をついた。
「ビール一本飲めるだけで、身を挺して戦っているなんて割にあわねーよ。」
グレイのその言葉に、ロビンは何かを思ったようだったがそれを口にはしなかった。
「俺なんて村で畑を耕して、どっかの誰かがこの国を救ってくれるのをただ待つだけだと思っていたのに…。まさかこんな所まできて戦争してるなんて、予想もできなかったよ…。」
グレイはそう言うと、そのまま後ろにひっくり返り星空を見上げた。
どんなにこの国が荒んでいようとも、この星空だけはいつまでも変わらずに、静かに光り輝いている。
こんな小さな国の戦争なんて、宇宙から見ればほんの些細な事なんだろう。
自分という存在なんて、きっとちっぽけな物なんだろう。
グレイは暗い気持ちになりながら瞳を閉じた。
ロビンはそんなグレイの様子を淋しげに見つめていたが、同じように星空を見上げた。
暫しの沈黙が流れる。



「もし俺が死んでも、オマエは俺の事ずっと覚えていてくれるか?」
突然グレイは口を開くとロビンの顔をじっと見つめた。
「な…何言い出すんだよ。突然…。」
ロビンはグレイの顔を見下ろして息を飲んだ。
グレイは真剣な眼差しをロビンに向けていた。
「正直今まで良く生き延びて来られたと思うよ。」
グレイは一旦言葉を句切る。
「だから、もし俺が死んでもオマエだけは俺の事をずっと覚えていてくれ。」
「そんな事言うなよ…。」
ロビンは悲しそうにグレイを見つめた。
「嫌だよ、グレイが死ぬなんて…。」
「もしもだよ…。もし俺が死んだらのハナシ。」
「もしもだって…。そんな話したくない…。」
ロビンはグレイから顔を背けると膝を丸めて俯いた。
「どうしたんだよ…。」
グレイが冗談っぽくそう言いながら、ロビンの肩を揺する。
「離せ…。」
ロビンはグレイの腕を振りほどくと、再び俯く。
グレイはそんなロビンの態度にカチンと来たのか、腕を強く引きロビンの顔を上げさせた。
「どうしたんだ。」
無理矢理グレイと面を合わされると、ロビンはグレイから顔を背けた。
「………。」
グレイは舌打ちをして、ロビンの顔をのぞき込むが、その表情にドキリとした。きつく唇をかみ締めて辛そうにするロビンの顔があった。
「ロビン……。」
グレイは咄嗟に掴んでいた手を離した。ロビンは再び俯く。グレイは場が悪そうにしばらくロビンの様子を見つめていた。
「死ぬなんて言うな…。」
「え……?」
突然呟いたロビンの言葉に、グレイはただ疑問詞を投げ掛ける事しかできなかった。
「絶対に……死ぬなよっ!俺を……一人にしないでくれよ……。」
辛うじてその瞳からは、涙がこぼれ落ちるのを留めていた。
そんなロビンの様子にグレイは心を痛めた。
「ごめん……。」
グレイはそう言うと、そっとロビンの頬に触れた。
「もう、言わないから……。」
そう言うと、ロビンの瞳から一筋涙がこぼれ落ちてグレイの手を濡らした。
「絶対に言わない。俺は、絶対に死なない。」
「グレイ……。」
ロビンが熱っぽく呟く。
「俺の事、好き?」
「は………?」
突然のロビンの言葉にグレイはあっけにとられていた。
「ねえ?俺の事、好きだよね。愛してるよね……。」
「あ……あぁ……。」
いつにもなく積極的なロビンに、グレイはまさかと思いながらロビンの頬に再び触れた。頬はほのかに火照り、その瞳は潤んでいる。
「オマエ……酔ってるだろう……。」
グレイは心配そうにロビンの顔色を窺う。
「酔ってないよ。」
その言葉に疑わしそうにグレイはロビンの顔を見つめる。
「酔ってないってば。」
明らかに酔っている様子のロビンだったが、グレイはわかったからと軽くたしなめた。
「俺の事、愛してる?」
再びロビンはグレイに問いかけてきた。
「………。」
グレイは暫く沈黙したままロビンの顔色を窺っていたが、ゆっくりとロビンの身体を引き寄せてその胸に抱きしめた。
「愛してる、誰よりも、オマエの事を……。」
グレイは困ったように微笑みながらも、はっきりと答えた。
「本当に…?」
「本当だ。」
ロビンは嬉しそうに微笑むと、グレイの胸に顔を埋めた。グレイはそっとロビンの髪を優しくすいた。
しばらく心地よさそうにその胸に抱かれていたが、ロビンはふと顔を上げてグレイの瞳をのぞき込んだ。
「俺も…グレイの事が好きだよ…。」
「…わかってる。」
グレイは真っ直ぐロビンの瞳を見つめながらしっかりと頷いた。しばらく見つめ合っていたが、そのグレイの瞳に偽りが無い事を確認したのか、ロビンはその口元に笑みを浮かべた。グレイはそっとロビンの頬に手を掛け、ゆっくりと唇を合わせた。触れるだけのキス。唇が離れると、グレイはきつくロビンを抱きしめた。
「絶対に、オマエを一人にはさせない。」
はっきりと、グレイはそう言った。
「うん。」
「絶対に…。」
グレイは自分に言い聞かせるようにそう言って、抱きしめる腕に力を込めた。これ以上きつく抱きしめられないほどに強く、ロビンの躰を抱きしめた。
「ロビン…。」
グレイは何かの了承を得るかのようにそっと呟いた。
「……。」
ロビンもそれに気付いたのか、何も言わずに静かに微笑んだ。
それが了承の合図だと受け取ったグレイは、ゆっくりとロビンの身体を横たわらせると、強く、激しく、その唇を奪う。
「辛くはさせない。でも…加減ができないかも知れない…それでも良いか?」
グレイはそう言いながら、ロビンの首筋を軽く噛んだ。白いその首にはくっきりと赤い痕が残る。
「構わない…。グレイなら…。」
ロビンは熱い吐息が漏れるのを抑えながら呟いた。グレイは再びその唇を塞ぎ舌を絡める。すべてを奪い去ろうとする、グレイのキス。抑えきれない吐息が溢れ出す。
「ん………。」
息も付けないほどの熱いキスに、ロビンの息づかいが乱れる。グレイは、キスをしながらゆっくりとロビンの身体をなぞるようにその指を滑らせてゆく。そして、一気にシャツをまくり上げると、ロビンの胸に静かに唇をおとした。
ほんのりと赤いその胸の突起をぺろりとなめ上げるとロビンの喉から小さな反応が返ってくる。かすかに震える指をグレイのその髪に絡ませる。
「あ……。」
必死に声をかみ殺そうとするが、甘い吐息が漏れる。グレイは右手でその突起をやさしくつまみながら、左手をゆっくりと下腹部へと滑らせた。
「ヤダ……。」
グレイの手がロビンの敏感な部分に触れようとする。ロビンは身を捩り、その手から必死に逃れようとする。
「大丈夫…。」
グレイは震えるロビンの指をそっと舐めあげた。びくりと躰が反応を返す。
「大丈夫だから…。」
もう一度グレイは優しく声を掛けた。その声に、少しだけロビンの躰から力が抜ける。グレイは優しくロビンの敏感な部分に触れると、ゆっくりと指を上下させた。
「あ……。や……止めて…。」
不慣れなその躰はグレイに煽られるままにその躰を持ち上げる。グレイはロビンの唇を塞ぎ、その声を飲み込んだ。
「んん………。」
必死にグレイの胸を押し返そうとする腕から力が抜けてゆく。グレイは一旦手の動きを止めると震えるその躰を強く抱きしめた。
「怖いか…?」
グレイはロビンの耳元で囁いた。
「………。」
ロビンは何も言わずにグレイの胸に顔を押し付けた。
「怖い……だけど…。いいよ。俺も…グレイに…抱かれたい……。」
一瞬顔を上げて呟いたロビンの顔は、羞恥からかその頬を真っ赤に染めていた。すぐさまグレイの胸に顔を押し付けるとゆっくりと両腕をグレイの背に回す。グレイはそんなロビンを優しく抱きとめ、その髪をゆっくりとなでた。そして、ロビンの顔を胸から離し、瞳を真っ直ぐ見据えた。
「もう後戻りはできないから…。」
「………。」
そう言ったグレイの言葉にロビンは静かに頷いた。







グレイは再び星空を見上げていた。そして、時折自らの腕の中にいるその愛しい人の髪をそっとすいた。
手加減なんてできなかった。その躰を貪り、苦痛の声を上げても、自身を押しとどめる事はできなかった。
ロビンの頬にうっすらと残る泪の後が妙に痛々しく、グレイの胸を締め付けた。ゆっくりとその跡をなぞり、瞼に唇を落とす。長い睫毛がぴくりと動く。
「……グレイ……。」
うっすらと瞳が開かれる。まだぼんやりとしているのか瞳の焦点は定まらない。
「ごめんよ。辛かっただろう…。」
グレイは、頬に残る泪の跡に口付けた。ロビンはそんなグレイの頬に触れると、ゆっくり首を横に振る。
「大丈夫。」
にこりと微笑むが、その笑顔に力がない。すぐに息を整えるように瞳を伏せる。
「辛くさせないって言ったのに…。ごめんよ、本当に…。」
グレイは優しくロビンを抱きしめた。ロビンはその腕の中で大丈夫と呟く。
「俺だって、自分で望んだんだ。グレイに抱かれる事を…。だから、全然辛くなんてないよ。むしろ、今とても幸せだよ…。」
だから、そんなに悲しまないで…。ロビンはグレイの顔を両手で包み込むとそっと唇を合わせた。
「大好きだよ……グレイ……。」
そのロビンの言葉に、グレイはたまらずに抱きしめた。
強く、きつく、絶対に離さないように。
「お前を絶対に離さない。」
「絶対に……。」
ロビンは嬉しそうに微笑んだ。
「嬉しい……。」
そして、しばらく見つめ合うと、ゆっくりと唇を合わせた。


ずっと一緒に……。
これが、誓いのキス……。



  オワリ




  後日談……


「ねぇ、グレイ………。俺、変な事言ってなかった?」
後日、ロビンは恥ずかしそうにグレイにそう問いかけてきた。
「は?なんの事?」
グレイはわざとなのか、素知らぬ顔でそう答える。
「だから……。あの、この前お酒飲んだでしょ……その時……。」
ロビンは恥ずかしそうに俯きながらそう言った。
「あぁ、あの日ね〜。どうだったかな。」
グレイはにやにやと笑いながら、言葉をはぐらかす。
「ちょっと酔ってて……変な事言ってないよね……。」
ロビンは小声でグレイに問いだたす。
「そうそう、『もっと気持ち良くしてぇ。』とか、『もっと激しくぅ。』とか。あとは……。」
グレイはくねくねしながら猫なで声を出す。
「ちょっとまてぇ!!!」
ロビンはわーわーと声を張り上げながらグレイの声をかき消した。
「そう言う嘘は止めてよね……。」
ロビンはグレイは睨みつけた。
「俺、な〜んにも嘘なんてついてないぜ。」
「……嘘……。」
ロビンは耳まで真っ赤にして俯いた。
「嘘嘘……。絶対そんな事言ってないよ……。」
ロビンはぶんぶんと首を振った。
「可〜愛いいなぁ。」
一人焦るロビンを後目に、グレイは満足そうに頷いた。
真相は、グレイのみぞ知る…。




  今度こそオワリ





 あのですね。かなりハナシが上下していますが、一応これがグレイとロビンの初情事になります(笑)。記念すべき初体験、それなのに!!!いい所で(?)暗転しちゃいました。逃げてしまいました。ゴメンナサイ。
 しかし、うちのロビンはあくまでもカワイコちゃん(死語)ですので間違っても実際のグラフィックを頭に浮かべながら読まれる事はお止め下さいね。これは貴方のためでもありますので(苦笑)あ〜でもここは『ロビン好きのロビン好きによるロビン好きのための(ぶっちゃけワタシのための)別館』なのでロビンが嫌いな方はきっと覗いてないよね(苦笑)
 それはそうと涙好きだなぁ。自分。でも戦争に身を投じる彼らにとって死ぬか死なないかは結構切羽詰まった事だと思ったので、めそめそしてても笑って許してください。とにかくワタシはロビンの涙が好きなんですぅ!涙フェチって、アルム以上に変態だな〜自分…。いや、オトメチックだと言って頂きたいね!(爆)

 追伸……どうでも良いけど野外Hが多いなぁ……。まぁ他にするトコ無いもんね(苦笑)それにビール1本じゃふつー酔わないよ。どんだけ弱いの?ロビンちゃん☆