日常 〜アルムの秘密〜
ある日、ロビンは非常に憂鬱な朝を迎えていた。
「うぅ〜…胃が痛いよぉ…。」
ベッドから起き上がろうともせずに布団の中で丸くなる。
「はぁー…。」
溢れるため息。
目の前にかけてある服が目に付き、再び大きなため息をついた。
「はぁ〜〜〜〜〜〜…。」
コトは2日前にさかのぼる…。
「だ〜〜〜〜っ!!!なんでラムの村にはレディーがおらんのだーっ!!!」
アルムが突然何かに取り付かれたかのように叫びだした。
「むっさいジジイと村人が4人ってか?」
ハッハ〜と笑いながらグレイは言う。
「そこでだ、グレイくん。ちょっとお話が…。耳、貸して下さい。」
なぜか後半は敬語だ。ご丁寧に敬礼で頭を下げる。
「なんだ?しょうがないな。耳を貸してやろう!」
アルムに敬われたグレイは、さも機嫌良くアルムの誘いに耳を貸す。
「なになに…ふんふん…。なヌ〜〜〜!!ノッタ!!!」
グレイはぐっと親指を立てると、アルムとがっしり握手を交わした。
「さすがグレイ!!乗ってくれると思ったよ!!!」
アルムは嬉しそうにガッツポーズをした。
どうやら話がまとまったようだ。
「ついに、俺の秘密兵器が世に披露される!!」
アルムは感慨深げに空を仰いでいる。
「…。」
そんな二人を、クリフとロビンは遠巻きに眺めていた。
「なんか凄〜っく、嫌な予感がするんだよね〜〜。」
クリフがなよなよと呟く。
「………。」
ロビンに至っては返事すらもままならない。
アルムとグレイがここまで意見が合うなんてことは、大層良からぬ事を考えているのは必至だった。
そうこうするうちにグレイとアルムは、なにやらごそごそと紙切れに字を書いているようだ。
そして、話がまとまったらしく、にやりと微笑みをクリフとロビンへ向けた。
「あ〜。なんかやな微笑だな〜…。」
ロビンは大きなため息と共に呟いた。
「そうだね〜。」
クリフも頷く。
そんな淋しくたたずむ二人の前に、アルムとグレイは意気揚々とやってきた。
グレイの手には、なにやら怪しげにたたまれた紙切れが4枚握られている。
そして、その顔は笑顔に満ちあふれている。
(ぜっっったい、変なこと考えてるよっっっっ!!!)
ロビンは口には出さずに心の中で密かにつっこみを入れた。
「あの〜。何始めるんですかぁ?」
クリフは気の抜けた質問を二人に投げかけた。
「まぁ、説明は後だ。とりあえずこの中から好きな紙を引くのだ!!!」
そう言い終わるか終わらないかの内に、グレイは手に持っていた紙切れをクリフとロビンの前に突きだした。
「これを〜引くんですかぁ。」
クリフは大変躊躇しながらおずおずとグレイの手を指さした。
うんうんと、アルムとグレイは同時に頷く。
「ロビン、最初にどう?」
クリフはロビンを推薦した。
「え〜と…。クリフ、どうぞ。」
ロビンは迷うことなくクリフに見せ場を譲った。
「いやいや。ここはロビンから。」
クリフもいつになく必死だ。
お互いに譲り合いを続け、なかなか怪しい紙切れを引こうとはしない。
そんな二人のやり取りに、気の短いグレイはイライラを抑えることができずに口を挟む。
「しょーがねーな。そんなに引くのが嫌なら俺が引いてやるよ!」
グレイはそう言うと、まずはクリフの分、などと言いながら紙切れを選び出した。
「まった〜〜!自分で引くよ〜〜〜!!」
クリフは慌ててグレイの手を止める。
「じゃ、クリフからどうぞ。」
アルムはにやりと微笑する。
「クリフ!!覚悟を決めろ!!!」
グレイも嬉しそうにクリフを茶化す。
「覚悟決めなきゃいけないほどのものなのかぁ…。」
クリフは悲しそうにがっくりと肩を落とした。
「頑張れ!クリフ…。」
ロビンも諦めて声援を送る。
「どれにしよう…。」
クリフが紙切れを選ぼうとすると、大変不自然に一枚飛び出ていた。
(怪しすぎる〜〜〜!!!)
クリフは心の中でつっこみを入れた。
大層怪しいので、クリフはその紙を避けて他の紙に手を伸ばした。しかし、グレイはクリフに他の紙を引かせないように力一杯紙を掴んで離さなかった。
必死に引っ張るクリフだったが、どうあがいても他の紙を取ることはできなかった。
諦めて不自然に飛び出た紙をつまむと、すんなりとクリフの手に移っていった。
「ハイッ!!クリフきまりね。まだ中見るなよ!」
グレイとの死闘を終え、クリフは肩で息をしながら悲しげにたたずんだ。
「くじ引きの意味ないよ〜。」
クリフはしくしくと、一人涙する。
「よし、それじゃ次、ロビン!!」
息を乱すクリフとは対照的に、グレイはとてもさわやかな笑顔でロビンを手招きした。
「………。」
ロビンは諦めて、手招くままにグレイの前に歩み寄る。
「好きなの引けよー!」
そう言うグレイだが、クリフと同様不自然に紙が一枚飛び出ていた。
グレイの期待を含んだ視線がグサグサとロビンに突き刺さる。
(…胃が痛い…。)
ロビンの胃はストレスに耐えきれず、キリキリと痛み出した。
それでも痛みに耐えながら紙を選ぶべく手を伸ばした。
「………。」
とりあえず怪しげな紙は避けて手を伸ばすと、とたんにグレイの笑顔が消え、大変悲しそうな表情に変わった。一旦手を止めて、飛び出た紙に手を伸ばすと再びグレイの顔に笑顔が戻った。
(わかりやすすぎっ!!!)
ロビンは胃の痛みも忘れてついつい心の中で突っ込んでしまっていた。
大変胃に負担がかかったようで、痛みが増したようだ。
もうどうでも良くなったロビンは早々に飛び出た紙を引き、ヨレヨレと座り込んだ。
「よ〜し!!じゃ、俺と、アルムも。」
そう言うとグレイは、二枚のうち一枚をアルムに手渡した。
「それじゃ、みんな一斉に紙を開いて中の字を読むこと!」
アルムが三人の顔を見回す。
「おーし!!!」
グレイは一人、良い返事を返す。
クリフとロビンは渋々頷いた。
「それじゃ、せ〜〜〜のっ!!」
グレイのかけ声で皆一斉に紙を開いた。
「女子こ〜せ〜っ!!」
「…ロリィタぁ????」
「ゆかたかー。」
「め…メイドぉぉぉ????」
素っ頓狂な声がラムの村一帯にこだました。
「じゃ!そういうことで!」
満足げにグレイは頷く。
その手には『女子高生』と書かれた紙がひらひらと風にはためいている。
「スミマセン。意味が良く解りません。」
半ば放心状態のロビンが遠慮がちに訪ねる。
その手の紙には『メイド』の三文字が。
「とりあえず明日からって事で。初日は俺とグレイで見本見せるから。ヨロシク!」
アルムはとても満足そうだ。紙切れには『ゆかた』の文字が。
「あの〜ぅ。まだ理解できません。」
クリフがなよなよと問いかけた。
そして、クリフの紙には『ロリィタ』と書かれていた。
「つまり〜、その紙に書いてあるかっこして一日過ごすって事!」
「ハァ〜!なるほど!」
グレイの説明にクリフは頷いた。
「って!!なんだそれは〜!!」
クリフは一人で納得し、つっこみを入れると悲しげに涙した。
(あ〜。もう限界です。)
クリフが一人漫才をして涙する隣で、ロビンの胃の痛みはピークに達していた。
(実は、これ夢だったりして。目が覚めたらベッドの上なんだよ。きっと…)
そう思いながら気を失った。
「ロビーン!!!どうした???」
しかし、グレイに肩をぶんぶんと揺すられて一瞬で目が覚めた。もちろんこれは夢ではなかった。
「それよりも、その各紙に書いてある服が無い場合はどうすれば良いですか?ちなみに僕はロリィタ持っていません。」
クリフはこれでロリィタが免れるかも!と期待の目をアルムとグレイに向けた。
「その点は抜かりはない!こんな日もあろう事かとヤホー(バレンシア語)のオークションで全ての服は手配済だ!!!」
アルムは自信に満ちあふれていた。
(ヘンタイだー!!!)
ロビンとクリフは同時に思った。
どこか普通の村人とは思えない雰囲気だったが、まさにその通り、アルムは変態だった。
「じゃ、そう言うことで。明日をお楽しみにィ〜。」
嬉しそうなグレイとアルムとは対照的に、クリフとロビンは暗く沈んだ表情でその背に夕焼けを背負っていた。
そして、一夜明けて…。
そこには、それは大層オソロシイモノがいた。
ショッキングピンクに真っ赤な薔薇の花が描かれたゆかたを着て、うちわでぱたぱたとあおぐ。
はたまた超ミニスカートの制服を着て、地面に胡座をかいて座り込み携帯をいじる。
ラムの村の人々は慌てて神に祈りだした。
「おぉぉ…。神はお怒りじゃーーー!!!」
そう言いながら恐怖におののいた。
クリフとロビンは、そんな様子を遠くから眺め、明日降りかかる我が身の危機に涙することしかできなかった。
そして再び、一夜明けて…。
話は始めに戻ります。
「ぜったい無理、ムリムリムリムリっ!!!」
ロビンは布団の中でぶんぶんと頭を振った。
頭の振りすぎで、胃の痛みに加えて頭痛もしてきた。
「誰か助けてよ〜〜〜〜。ミラ様〜〜〜〜。」
こんな時ばかり、ミラに祈りを捧げた。
布団の端からちらちらと見え隠れするメイド服を見る度に胃の痛みは増すばかりだった。
そうこうしていると、部屋の扉が豪快に開け放たれた。
「おはよ〜〜〜〜!ロビン。じゃ、メイド、ヨロシク〜〜〜。」
悪魔の声と、その主が飛び込んできた。
その最高潮のグレイの微笑みに、ロビンの胃の痛みは再びピークに達し、気を失うのだった。
「ロビ〜〜〜〜ン。おーい!!しっかりしろ〜〜〜!」
薄れ行く意識の中で、グレイの女子高生姿を思いだすロビンだった。
「お〜いお〜い。メイドしてくれ〜〜〜!!!」
グレイの悲痛な叫びが何時までも何時までも、ラムの村に響いていた。
オワル。
ごめ〜〜〜ん!ほんとはクリフのロリィタとロビンのメイド、書きたかったんだけど。なんか危ない方向に進んじゃいそうだったので止めました。中途半端で済みませんねぇ(汗)ちなみにうちのラムの村の住人相関図はアルム→クリフ。グレイ→ロビン。みたいな感じです。ロビンの気持ちは〜いずれ小説にでも書こうかと思います。(誰も読みたくないってョ。)結構複雑な感じ。ま〜エロはしばらく無しの方向で行くんで安心してください。私はホモの恋愛は大好きだけど、その延長線上にある行為自体はまぁどっちでも良いんで(苦笑)純愛が好きなんですよ!はい!!!キスだけで赤くなっちゃうようなね。(にやりっとな)
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