白い夜。



「今日はすっかり日も落ちてしまった。野営にするので皆、準備を頼む。」
アルムの声が日が落ちた山裾に響いた。
「あぁ。それから今日の見張りはクレーベの方から各自に連絡をして貰うから、宜しく!」
そう言うとアルムは軽く一礼し、それじゃルカさん。と、ルカを促した。
「はい。ではいつもの様に一定の距離を保ちテントの設営を行って下さい。それから、これから名を呼ぶ人達は夕食の準備をお願いします。シルクさん、クリフ君………。」
ルカの事務的な説明が続く。

「解放軍もいつの間にか大所帯になったものだな…。」
フォルスが苦笑混じりにクレーベに毒づく。
「俺たちだけでは、こうも上手く事は運ばなかった事だろう…。」
クレーベは面目が丸つぶれだ、などとと言いつつ軽く頭をかいた。

解放軍はついに敵国であるリゲル王国へと足を踏み入れていた。
新たな仲間達も続々と加わり、今やリゲル一体までその名を知らしめていた。
若い軍師による指導の元、ソフィアの民が押し寄せてきている…と。
そんな折りに敵国内での野営ともなればいつ寝首をかかれるか常に注意を払わなければならない。

「とうとうこんな所までやってきたか…。」
クレーベは感慨深げに一人頷いた。




「お〜〜い。ロビン。珍しいな、お前が食事当番外れているの。」
せっせとテント設営に精を出すロビンに、すっかりやる気の無いグレイが声を掛けた。
「そうは言うけど…。俺だってそう毎日毎日料理作っている訳じゃないし。たまには当番外れる時だってあるさぁ。」
ロビンはその手を休めることなくグレイに返事を返した。
「俺は毎日ロビンの手料理でも飽きないけどなぁ〜。」
グレイはぽつりと呟いた。
「は?なんか言った?」
ロビンがじっとグレイの顔を見つめる。
「何でもねぇよ!」
グレイは苦笑を浮かべた。
(ちゃっかり聞いていやがる…。あなどれんヤツだ…。)
と、今度は心の中で呟いた。
「それよりグレイ!そんなトコにぼけっと突っ立っていないでちゃんと手伝えよ。」
一人テントと格闘を続けていたロビンは上の空のグレイを呼んだ。
「はいはいは〜い。ロビンが俺の言う事何でも聞いてくれたら俺、いくらでも手伝っちゃうよ〜。」
グレイはロビンの返事も聞かずに勢いよくロビンの手からロープを奪い取りテキパキと設営を始めた。
「調子良いんだから…。」
何だか微笑ましく思い、グレイのほざいていた言葉も忘れついつい微笑を浮かべるロビンだった。
「おーい!ロビン!!ちょっと良いか?」
その時突然後方からクレーベに声を掛けられて、ロビンはびくりと肩を震わせた。
「ん?どうした?」
クレーベは不思議そうにロビンの様子を窺った。
「あ、いえ、何でもありません………。」
驚いた事が恥ずかしかったのか、両頬がとたんに赤くなる。そわそわと火照った頬を冷やすように両手で顔を包み込んだ。
(何をやっているんだか……)
クレーベはそんなロビンが可笑しくて思わず吹き出していた。
「そんなに焦らなくても、取って食う訳でもないんだから…。」
「えっ…。あの……。」
焦るロビンとは裏腹にクレーベはくっくと肩で笑う。
「俺…なにか可笑しな事言った…?」
一人呟くロビンがまたクレーベには可笑しくてたまらないようだった。
暫く訳もわからずおろおろとするロビンを後目に、一通り気が済むまで笑ったクレーベは、気を取り直して咳払いを一つすると、本題を切り出した。
「いや、すまんすまん。それより今日なんだが………。」
クレーベは地図を広げると、とたんに表情を厳しくした。
ロビンもそれに習うように真剣な面もちでクレーベの話に耳を傾けた。


そんな二人の様子を、グレイは遠目で見ながらほんの少し嫉妬心を燃やしていたのだった。
(くそークレーベめ!!かっこつけ野郎が〜〜!!)
ぶつぶつと文句を言いながら、怒り任せにハンマーを振り上げて、杭を一発で地面に埋め込んだ。
「どうしたのグレイ?なんか機嫌悪くない??」
「うわぁぁっ!!!」
突然ロビンに後ろに立たれてグレイは思わず尻餅を付いた。
「いきなり俺の後ろに立つなっ!!」
グレイはドキドキしながらロビンを睨み付けた。
「そんな事言ったって…。」
ロビンはたいして悪びれた様子もなく、ねぇ。と笑う。
(コイツ…。俺がお前の笑顔に弱いって事知ってんじゃねぇのか…。)
グレイは口元を引きつらせつつ、ははは…とカラ笑いを続けた。
「それより食事の用意ができたみたいだって。」
そう言うと、ロビンは尻餅を付いたままのグレイを一人放ったまま、手早く荷物をテントに押し込んだ。
「グレイ、いくよ〜。」
ロビンはグレイの前に手を差し出してにこりと笑った。
「………悪いな……。」
グレイはバツが悪そうな表情をしつつも差し出された手を取った。
「よいしょっと。」
軽くかけ声を掛けてロビンはグレイを引っ張ると、さ、行こうか。とグレイを促した。
「ちょっと待て、クレーベはわざわざそんな事を言いに来たのか?」
突然思い出したかのような質問にロビンは?を浮かべた。
「え…?あぁ、それはついでかな。ちゃんと大事な話も聞いたよ。」
「はぁ?大事なハナシ〜〜???」
グレイは素っ頓狂な声を上げた。口をぽかんと開けたまま何か考えを巡らしている様子だ。
「…………。」
そんなグレイをロビンは不思議そうにじーっと見つめていたが、どうも思考がどこかに飛んでいっている様子のグレイにさっさと見切りを付けた。
「先行くからね。」
相変わらずぼーっとしたままのグレイを一人置き、ロビンはさっさと夕食へ向かうのだった。
「オイ、まてよ!オーイ!!」
グレイは慌てて我に返るとロビンの後を必死に追いかけていった。




滞りなく食事も終わり、時は既に10時を回る。
各自、自分のテントに入り、思い思いの時を過ごす。

「あ〜〜〜〜。今日は寒いね〜〜〜〜。」
声を震わせながらクリフが呟く。
すっかり寝袋に潜り込み、辛うじて顔が少しだけ見え隠れする。
それでもまだ寒いのか身体をまるくして寒い寒いと一人呟いている。
「無理してでも近くの村を探すべきだったか〜〜〜。」
アルムもまた、すっぽりと寝袋に潜り込み声を震わせた。
「二人は寝袋だから良いだろーがッ!!!」
グレイは毛布にくるまって、より一層震えながら叫んだ。
「しょうがないだろ〜〜じゃんけんなんだからさ〜〜〜。」
クリフが口を尖らせる。
「そう言う事。」
アルムもクリフの意見に賛同する。
「ちくしょ〜〜〜〜!!ロビンもなんか言ってやれよ!!!」
グレイはがたがた震えながら隣で頭まで毛布を被っているロビンをつついた。
「仕方ないよ………それよりおとなしく毛布にくるまっていた方がいいよ。」
ロビンは頭をちょっと出してグレイをたしなめると再び頭まですっぽりと毛布を被った。
既に諦めもついて文句一つ言わないロビンと、未だに納得できぬまま一人怒りを露わにしているグレイ、何だか自分がとても子供じみているような、そんな虚しい気分をグレイは感じた。
「ち〜く〜しょぉぉ〜〜〜〜!!」
何が悔しいのかもいまいち不明なまま、グレイは地団駄を踏んで悔しがるのだった。


戦争が長引けば、それだけ資金集めにも困ると言う事で…。
寝袋も二人に一つしかないほどに、現在の経済状況は緊迫していた。
寝袋争奪じゃんけんは、見事アルムとクリフが征し、グレイとロビンは薄い毛布一枚ずつと、二人で一枚の布団のみとなったのだった。
これはおいしいぜ!などと思ったグレイだった。が、あまりの寒さにそれどころではないと言う事を肌で感じる今日である。
それでもグレイは必死に考えを巡らせる。
「ロビン!知ってるか?寒い夜は人肌が一番のぬくもりなんだぜ〜〜。」
そう言いながらロビンの毛布に潜り込もうとするグレイ。
「肌と肌を寄せ合えば?不思議!寒さも忘れる心地よさ〜♪」
そんなグレイをロビンは軽く一睨みする。
「じゃあ、グレイが服脱いでよね…。」
冷たい視線がグレイのハートを突き刺す。
軽く受け流されてしまったグレイは淋しげにロビンの毛布から這い出してきた。
「つめて〜よぉ〜。ひで〜よぉ〜。聞いたか〜クリフ〜。」
クリフの元へ詰め寄るグレイ。
「そりゃグレイが悪いんじゃないの〜〜〜。あんまりそわそわしていると布団暖かくならないよ〜〜。」
クリフはあくび混じりに半分寝ながら言った。だいぶ寝袋の中が温かくなったのか既に夢見心地のようだ。
「グレイ、明日も早いんだから早く寝ろよ…。」
アルムにそう言われ、グレイは渋々と冷たい毛布にくるまった。
「みんなしてつめてーのな……。」
皆の冷たさと毛布の冷たさにブルブルと震えながら、グレイも淋しく眠りについたのだった。




真夜中を過ぎ、時刻は2時を回った。
既に何処のテントも寝静まり静かな寝息だけがあたりに響く。
しかし、どこかからか静かにグレイらのテントに近づく足音があった。
そっとテントの裾を開けると各自の顔を確認し、すぐそこにあったロビンの肩を叩いた。
「ロビン、起きろ。交代の時間だぞ……。」
小声でロビンを起こす。
ロビンは目を擦りながらその声の主に焦点を合わせると、慌てて飛び起きた。
「あ!パイソンさん…!済みません、寝過ぎちゃいました…。」
相変わらずなかなか冷めない目を擦りながら、ロビンは必死にあくびが出るのを押し込めた。
「あぁ、大丈夫だ。それより今日はかなり冷え込んでいるぞ…。しっかり着込んでいけよ。」
パイソンは鼻の頭を真っ赤にしている。よほど寒いのだろうか。ロビンははい、と返事を返した。
「じゃあ、俺は戻るから。後宜しくな。」
パイソンはそう言うときびすを返して自身のテントへ戻っていった。
「早く行かなきゃ………。」
ロビンは慌ててコートを着込むと、見張り用のテントに急いだ。
パイソンの言うとおり、外はかなり冷え込んでいた。息も白く、見る間に手が冷たくなる。
こんな事なら毛布も持ってくればよかったと思うが今更戻る訳にも行かず、かじかむ手を擦りながら急ぎ走った。
暫く走ると、見通しの良い少し小高い場所の木陰に、小さな一人用のテントが張られていた。
風くらいなら防げるか…と、苦笑しながらロビンはそのテントに潜り込むと、双眼鏡を手に取り、じっとまるくなった。
先ほどまで出ていた月や星が、いつの間にか雲に隠れ、あたりはますます暗くなってきた。
こんな時こそ気を付けなくてはいけない。
ロビンは暗闇に目を凝らしながら、震える体を自らで抱きしめた。

「がさっ………」

その時、何かがロビンの前方で動いた。
どきりと心臓が高鳴る。
慌てて剣を取り、静かに息を殺した。

「がさがさ………」

再び何かが動く音がする。
慌ててランプの火を消し、テントから外に出ると、音のした方向へ剣先を向けた。

「がさがさがさっ……。」

茂みの間から、確かに人の頭が表れた。
素早くロビンは横へ回り込む。

「誰だ……。」
ロビンは剣の先端を、相手の喉元へ向けた。
「うわっ!!ちょっと!まて!俺だよ!!」
「え………!?」
その声にロビンは慌てて剣を引いた。
「あっぶねーな…。危うく首が飛ぶ所だったぜ…。」
そう言って顔を出したのはグレイだった。
「なにしてんだよ、こんな時間に…。」
驚くロビンにグレイははいっと毛布を手渡した。
「なにって、この寒い中ロビンが出掛けていくから追いかけてきたんだよ。」
それより早くテントにはいろーぜ…。と、グレイはさっさとテントに潜り込んだ。
「そこ、一人用だよ…。」
そう言うロビンに大丈夫大丈夫、詰めれば平気。などと言いながらグレイは手招きする。
その場に突っ立っている訳にも行かず、ロビンは手招かれるままにグレイの隣に座った。
「ったく、こんな時間にロビンを見張りに出させるなんてクレーベの野郎〜〜。」
グレイはぶつぶつと文句を言い出す。そんな様子にロビンはふふっと笑みをこぼした。
「さっき毛布渡したろ、早く、それ掛けて。風邪引くからな。」
グレイはテキパキとロビンの肩に毛布を掛けると自分はは〜っと息をはいて両手を擦り合わせた。
「ありがとう。グレイは?」
「俺か?俺は大丈夫!お前とは体の作りが違うからな。」
そう強がってはいるもののグレイはぶるぶると肩を震わせた。
「ほら、一緒に毛布掛けようよ。」
ロビンは毛布の裾を上げてグレイを手招きした。
「そうか?じゃ、お言葉に甘えて…。」
グレイは笑顔で毛布に潜り込んできた。
「………。」
ロビンは全く躊躇の無いグレイに苦笑しつつも、確かに人肌は暖かいかもね…などと思いながらグレイの肩に身を寄せた。
「しかし、今日の寒さは半端じゃねーよ…。クレーベのせいだ、絶対そうだ。」
グレイは双眼鏡片手に再びぶつぶつと文句を言い始めた。
確かにグレイの言うとおり、かなりの冷え込みだった。。それがクレーベのせいかどうかなどはもちろん定かではないが、こんなところでうとうとなどしようものなら明日の朝はすっかり凍え死んでしまうような寒さだった。
こんな時に誰か隣にいてくれれば大層心強いのだが、この寒さはとても辛い。ロビンはグレイをたしなめるように声を掛けた。
「グレイは早く帰って寝なよ。俺一人で見張り続けるからさ。」
そう言うロビンをグレイはじーっと睨み付けた。
「それじゃなんのためにわざわざこんな所まで来たんだか意味ねーよ。」
「意味って、なんの?」
「え………?」
ロビンの率直な質問に、グレイは慌てて言葉を探した。
「そりゃ、心配だからだよ。悪いか………。」
グレイは少し恥ずかしそうにしながらも、結構大胆な事を平気で言ってのけた。
「ふぅん。俺の見張りじゃ安心できないんだ……。」
グレイとは少し解釈が違う返事をロビンは返した。そうだよね、俺どうせみんなのお荷物だしね………。などとぶつぶつと文句を言いながらふて腐れる。
「お前、何言ってるんだ?俺は、お前が心配だって言ってるんだぞ?」
「は?」
ロビンはじっとグレイの顔を見つめた。
そして、グレイの言葉を理解するため、ロビンは暫し動きを止めた。
「俺の、何が心配???」
いまいち理解できないのか不思議そうに首をひねる。
「お前結構ばかだなー。お前が一人でこんな所にいて誰かに襲われたら(いろんな意味で)どうするんだよ。俺はそんなお前を守るために、こうしてこんな夜中ですらやってきたナイトだぜ!!」
「ナイト…ねぇ……。」
グレイの言葉を必死に理解していたロビンだったが、突然頬が真っ赤に染まっていったかと思うと、驚きの表情でそわそわとしだした。
「ちょ……なに言ってんの?グレイ!そういう冗談はやめろよな!!!」
ロビンは咄嗟にグレイを力任せに押した。
グレイは突然のロビンの攻撃に後ろにひっくり返った。
「おい!何するんだよ!!!いてぇな………」
グレイは頭をさすりながら起き上がる。
「ばか!近づくな!!」
再びロビンはグレイを押しのけると、一人で頭からすっぽりと毛布にくるまった。
「言って良い冗談と悪い冗談があるんだぞ!そういう事俺なんかに言うなよ!ばかっ!」
すっかり毛布にくるまっているせいでグレイにロビンの表情は見えない。グレイは冗談なんかじゃないのにと思いつつ再びロビンの隣に座る。
やりきれないような、あやふやな気持ちがあったが、何も言わずにグレイは黙っていた。

そのまま暫く沈黙が続いた。
グレイは双眼鏡であたりを眺めている。
ロビンは近くの茂みをじっと見つめていた。
「あのさ、グレイ………。」
「は……?」
突然グレイは話を切り出されて曖昧な返事を返す。
「なんでもない…。ごめん…。」
「なんだ?どうしたんだ?」
「なんでもないって。あ…さっきはごめん、ちょっと言い過ぎた……。」
ロビンは軽く笑った。何となくグレイにはその笑顔がとても淋しそうに見えてならなかった。
「どうした?」
グレイはロビンの顔を心配そうに覗き込んだ。
「え?なにが?そんな、真剣に聞かないでよ…。」
「ロビン………。」
「な………なに?」
突然真剣な表情になったグレイにロビンは言葉に詰まった。
「俺の前で、そんな辛そうな顔するなよ…。」
「………どうしたの、グレイ………?」
話をはぐらかそうとするロビンだったが、グレイの視線はロビンをとらえたまま離さなかった。
「ちょっと、俺その辺の様子見てくるから…。」
ロビンは慌ててその場から逃げるように立ち上がろうとした。
「待てよ!!」
グレイは咄嗟にロビンの腕を掴んだ。
「ごめん…離して………。」
ロビンは動揺を悟られないように努めて冷静さを装ったが、微妙な声の震えは隠す事ができなかった。
寒いからではなく、グレイの真剣な表情が怖かったのだ。
「なんで逃げようとする?」
グレイは真っ直ぐロビンを見据えた。
「別に…逃げてなんかいないよ……?」
繕おうとする笑顔が上手く行かずにすぐに笑みは消えた。
「俺は、お前の事が好きだ。」
いきなりのグレイの告白にロビンは驚きを隠せぬままじっとグレイを凝視した。
「冗談なんかじゃない。俺は、本気でお前が好きだ。」
「……………。」
グレイの真っ直ぐな視線から、ロビンは視線を逸らした。
「ごめん…。」
ロビンは俯いたまま小さく呟いた。
「俺じゃ…ダメなのか?」
グレイはロビンの両肩を掴み、真っ直ぐロビンの顔を見据えようとした。しかしロビンは俯いたままで、顔を上げようとはしなかった。
「俺の事、嫌いなのか?」
「………。」
何も言わず俯くロビンの肩がかすかに震える。それがグレイの手にも伝わってきて、虚しさと、寂しさと、何も言わないロビンへの苛々が募ってきていた。
「……………。」
グレイは何も言わず、突然ロビンを強く抱きしめた。
「ちょっ……はな……してよ………!」
必死にグレイの胸を押し返そうともがくが、ロビンの抵抗など全くグレイには通用しない。
「離せよ!馬鹿っ!!」
ロビンの叫びに一瞬グレイの手が緩んだ。ロビンはその隙を逃すことなく、転げるようにテントの外に飛び出した。しかし、慌てて飛び出したせいか足がもつれその場に膝をついた。
「………。」
グレイは自らも膝をつき、しゃがみ込んでいるロビンの腕を掴むと、そのまま自分の胸に引き寄せた。
「やめろっ………離せよ………!!」
黙ったままのグレイが余計にロビンに恐怖感を与えていた。いつものグレイとは違う。なにか、切羽詰まったような感じすら伺えた。
グレイはロビンの顎を掴み無理矢理上を向かせた。グレイの瞳に冷たい色が影を落とした。
「俺の事、嫌いなら、それでも構わない。でも俺は………。」
「…………!」
グレイはそのまま強引にロビンの唇を奪った。必死に顔を背けるロビンを押さえつけ、何度も何度もその唇を奪う。そのまま強引にロビンを押し倒すと身体の自由を奪ったまま再びその唇を塞いだ。
「好きなんだ………。俺のものにならないのなら、いっそめちゃくちゃにしてやる………。」
グレイの視線にロビンは息を飲んだ。グレイの唇はロビンの首元に埋められると、その細い首に赤い痕を残してゆく。
「やめてよ………俺は……こんなのを望んでいるんじゃないのに………!!やめて、グレイ………お願いだから………。」
ロビンの必死の懇願に嗚咽が漏れる。静かに流れる涙が、ゆっくりと頬を伝わり落ちていった。
その様子に一瞬グレイの手が止まる。我に返ったようにゆっくりとロビンの表情を見つめた。
「俺だって……グレイの事好きだよ。嫌いな訳…無いじゃないか………。だけど……こんな、急に………まだ気持ちの整理が付かないのに………。」
「ロビン………。」
グレイは静かに呟いた。
「ごめんグレイ………俺、グレイの事好きだよ。本当に。でも……まだ……ダメなんだ。ごめん………。」
ロビンの瞳から溢れてくる涙は、歯止めの利かなくなっていたグレイの心を次第に落ち着かせていった。慌ててロビンを起こすと、今度は優しく抱きしめた。
「謝るのは俺の方だ………。」
グレイは震えるロビンの肩を優しく何度もさすった。ロビンは両手で顔を覆うと、静かに流れる涙を受け止めた。
「ごめん………ごめんよ。俺、どうかしてたんだ………。何を焦っていたんだろうな………。ごめんよ、ロビン。」
「もう良いよ………。大丈夫…だから。だけど、もう少し時間が欲しいんだ。それまで、待っててくれる……?」
瞳を赤くはらせたままで、ロビンはすまなそうに瞳を伏せた。
「大丈夫、ちゃんと待てるよ。だから、もうそんな辛そうな顔しないでくれよ………。」
グレイはロビンの頬にかかる髪をそっと耳に掛けた。
「もう一度、笑ってくれるか?」
グレイの問いに、ロビンははにかんだように笑みを見せた。そして恥ずかしそうに俯いた。
「ロビン………好きだよ………。」
さっきのような勢い任せの告白ではない。真っ直ぐロビンの瞳を見つめて、グレイはそう言った。
「………ありがとう………俺も、好きだよ………。」
ロビンもにこりと微笑んだ。
そして、静かに二人の唇が触れ合った。


瞳を閉じていたロビンの頬に、冷たいものが舞い降りてきた。
「あ………雪………。」
ロビンの呟く声にグレイも慌てて空を見上げた。
ほんの少し明るみを帯びた空から、真っ白な雪がゆっくりゆっくりと舞い降りてきていた。
「ホントだ………そりゃ寒い訳だな………。」
グレイは思い出したかのように身震いを一つした。
「結局、ちゃんと見張りしないままだったね…。もう交代の時間だよ………。」
ロビンは時計を指さしてため息をついた。既に時計の針は4時を回っている。
「そうか、終わったか。で、次は誰?これからが一番冷え込むってのに!!」
グレイは他人事の様に笑った。
「え?次はグレイでしょ?聞いてなかった?」
ロビンは驚いてグレイの顔を凝視する。
「はぁ?俺そんな話一言も聞いてないぜ?クレーベの野郎俺に言い忘れてたな!!!あいつめ〜〜〜!!!」
グレイはワナワナと肩を震わせた。
「俺は確かに『次の交代はグレイだからよろしく』ってクレーベさん言ってたと思ったけど…。」
「あの野郎………ゆるさね〜〜絶対仕返ししてやる!!!」
ロビンの声も既にグレイには届かず、グレイはクレーベに恨みはらさでおくべきか〜とメラメラと闘志を燃やしていた。
「それじゃ、俺は戻るからね。グレイ宜しく!」
「おいおいおいおいおい!そりゃ無いだろ〜〜。つめて〜よぉ。」
笑顔でそう言うロビンに、グレイは泣き言を言いながら詰め寄った。
「…………嘘だって、俺も一緒にいるから………。」
そう言ってにこりと微笑んだロビンをグレイはうれしさのあまり抱きしめていた。
「も〜〜〜!!だからロビン大好きなんだって!!」
ぴょんぴょんと跳びはねるグレイを見ながらロビンもにこりと微笑んだ。
「俺は、そんなグレイが好きだよ…。」
しかし、その声は冷たい雪に吸い取られたかのように、グレイの耳には届かなかった。
ロビンは少しほっとして、舞い落ちる雪をひとひらその手に乗せると、ぎゅっと握りしめた。


白い雪が見る見るうちにあたりを白く染めてゆく。
何もかもを真っ白に染めて、白い夜が終わる。




          もう、終わらせてください(汗)




 ごめんごめんは私の台詞じゃ〜!!あ〜もうダメ。なんかこの歳になってこんなの書いてる自分が恥ずかしくなってきた。「こんなに甘々しておきながらHなしかよ!!」とか、自分で書いてて突っ込んじゃうのよね。あとは「こんなシチュエーションで愛の告白なんてするかよ!!!」とか(笑)途中で危うくギャグ路線に行っちゃうトコだったし…ヤヴァイよ!私、夢見る乙女ぢゃないよ〜〜(涙)夢見てないよ〜〜〜。つ〜か既に乙女でもないし!!!(今頃気付いたかダアホめ!!!)まぁいいや。心はいつだって乙女でい・さ・せ・て☆………やばっ!!思考回路から既におかしい。一応小説はオトメチックにできたから良しとしよう。こんな冷えた心でよくもこんなオトメチックなもの書けたな!って自分で自分を褒めてあげたい!(微妙に古い)まぁそんな訳で、今後も意味不明にオトメチックな小説が書かれても突っ込まずに共に乙女になりきって温かい目で見つめてください。
 そうそう、今回はとにかくラ●ュタのシータとパズーが見張り場で毛布だか何だか被ってくっついているシーンを書きたかっただけなのです。このシーンを表したい!!ってが為に書く話って難しい………。
 話の方に関しては、もうノーコメントで(笑)こんな乙女なロビンはいね〜よ!絶対!!!そのうち超エロイの書くから許してよ。もう鬼畜丸出しだで。(でた!南信弁…)もういいや!!逃亡!!!
 あぁ、一つ補足を言い忘れてた。彼らのテントだけど、外伝だから旧式の杭をさして固定する古いタイプ使ってんのよ。必死に立てるヤツね。最新式の簡単設営!ってヤツじゃないんで。まぁ誰も突っ込まんとは思うけど、一応補足…。