出会いはちょっぴりスパイシ〜


今日も平和なラムの村。
どこからともなく聞こえてくるのはグレイの大きな怒鳴り声。
「リーダーはオレだ!!!」
そう言って今にも殴りかからんとするグレイ。
「おちつけよ〜。」
なよなよとグレイの右腕を押さえつけているのはクリフ。
「抑えて、グレイ…。止めとこうよ。」
左腕はロビンが必至に押さえる。
「この僕がラムの村に来た以上、リーダーの座は譲ってもらうよ。」
そんな3人の前でふふんと鼻を鳴らしにやりと笑うのは、かのアルバイン・アルム・ルドルフことアルムだ。
その傍らにはアルムを取り囲むかのように立ち並ぶ4人のSPが!!!その姿は厳つい顔に黒スーツ。身長はゆうに190センチを超えるかと思えるほどのガタイの良さだ。
「なんだお前!!!偉そうにっ!!!」
グレイはロビンとクリフを振りほどくと勢いよくアルムに殴りかかった。
しかし、グレイの拳はアルムに届くことはなかった。SPの一人、さしずめSP1の腹部分にあたりSP1が吹っ飛ぶかと思いきや逆にグレイがその反動で吹っ飛ばされたのだった。
「いでー!!!」
吹っ飛ばされたグレイは勢いよく尻餅を付いた。
「あーあ。大丈夫?グレイ。だから止めた方が良いって言ったのに…。」
ロビンはため息をつきつつ起き上がろうとするグレイの手を引く。悪いな、そう言ってグレイはロビンの手を取って立ち上がる。クリフは相変わらずなよなよしたままだ。
「あぁ。言っておくけど、この4人は僕が危険にさらされるといかなる場合も守るように言いつけてあるからね。」
アルムはSP達をかき分けけてにやりと笑う。
そんなアルムを押しのけて、SP達は一列に立ち並んだ。
「ワタシタチ、アルムサマ、マモリマス。」
なぜか片言な言葉を話すSP。しいて言うならば、中国語風に日本語を話すような感じである。
「正当防衛だから加減はできないからね。」
再びアルムの前に立ち並んだSPをかき分けてアルムは自慢げに付け加えた。
「なんかすげー腹立つ!!!」
グレイは地団駄を踏んで悔しがる。
その傍らで、ロビンとクリフはがっくりと肩を落とし大きなため息をついた。
もうそんなことどうでも良いよとでも言いたげな感じである。
「ところで、君はグレイというんだよね。」
突然思い出したかのように、アルムはグレイに話しかけた。
「…。ふん。」
グレイはその問いに答えることなく目をそらした。
「まあいいや。さっきから君のことグレイって呼んでいるからね。」
アルムはちらりとロビンの方を見ると笑みをうかべる。
「…。」
突然ふられたロビンは慌ててアルムから目を逸らした。
「君はなんていうんだい?」
アルムは相変わらず作ったような笑顔でロビンに問いかける。
「えぇと。オレは…。」
何となく躊躇しつつロビンはグレイに助けを求めるように視線を向ける。しょうがないなとでも言いたげに、グレイはずずいとアルムとロビンの間に割って入った。
「バーカ。お前に教える名前なんかついてねーよ。」
グレイは超アホな顔をアルムに向けた。
「そ…そうかい?」
必至に笑顔を保とうとするがヒクヒクとアルムの口元が引きつっていく。
「…………ぷッ」
そんな二人の表情に、ついに我慢できずに吹き出すロビンとクリフ。
「ダァーッハッハッハ!!!」
それを受けてグレイは盛大に馬鹿笑いをする。しかもアルムの顔を指さしつつ。
「…………(ぶちっ)」
この音は、アルムの堪忍袋の緒が切れた音である。
「おいおいおい!!!聞いたか?ロビン、クリフ!!ぶち!だって。だっはっは!!!」
グレイはついにひっくり返って笑い出した。
「堪忍袋って切れるの?ぶちって?あっはっは」
クリフも一緒に笑い出す。
「二人ともそんなに笑うと失礼だって。堪忍袋がぶちって切れたって良いじゃん。それが彼の表現力なんだから。」
アルムに妙なフォローを入れるロビン。しかし全くフォローになっていないのは、言うまでもない。
「どうもお騒がせして済みません。グレイ、クリフ、もう帰るよ。」
そう言うとロビンは二人の手をひっぱる。
「お?帰る??もうそんな時間か。今日の夕飯なにかな〜」
グレイは何事もなかったかのように遠くを見ながら本日の夕飯について想像を膨らませている。
「そう言えば今日はカレーだって言ってたよ!」
クリフが嬉しそうに答える。
「マジか〜!俺カレー大好き!!!」
グレイの頭の中はもうカレーでいっぱいだ。
「ハハヒヒフヘホカレ〜♪」
ついには妙な歌をグレイは歌い出した。

ハハヒヒフヘホカレ〜♪ハハヒヒフヘホカレ〜♪みんなだいす〜き♪はひふへほ!か〜れ〜♪

妙な歌が小さくなると共に、3人の影も夕日の中に消えていった。
今日もゆっくりと夜が更けていく。

と、忘れるところだったがその場には堪忍袋の緒が切れたまま悲しそうにたたずんでいるアルムの姿があった。
「なんなんだ、ここの奴らはー!!!」
アルムは思わず夕日に向かって叫んでいた。
「まあいいや。名前はたしかグレイに、ロビンにクリフ。だったな。」
アルムはちょっぴり嬉しそうに微笑んだ。
「夕飯はカレーか。僕も大好きだ!!」
そう言うとアルムも夕日を背に歩き出した。

ハハヒヒフヘホカレ〜♪ハハヒヒフヘホカレ〜♪みんなだいす〜き♪はひふへほ!か〜れ〜♪

アルムの口からも例の歌が流れ出す。
SPの声も重なりまさに輪唱だ!

今度こそ、今日もゆっくりラムの村に夜が来るのでした。



おわり。




HP完成記念に、相方玄海氏に捧げたギャグ小説。
アルムと村人3人ってどんなかんじに出会ったのかな〜って思って書いた話。ちなみに外伝外の処女作品だったりするのです。
トコロで、小説内の挿入曲ね、「おか●さんといっしょ」で歌ってた。最近うちの子と見てるけど(現在1歳3ヶ月)歌の内容は昔とあんまり変わってないね。まぁうちらの頃はじゃじゃ●るとかだったけど(笑)