〜FE愛の劇場〜

集え変人!! 〜サッカーボールにかける情熱〜 1


 ある冬のことだった…。

「さむいっ!さむすぎる!」
 さっそくだが、クレーベは怒りを飛ばした。
「この寒さをなんとかせんかっ!」
 しかし、この声に答える人員が、すでに黒焦げになっていた。
 そこへラムの村在住の、3人の村人が現れた。
「く…クレーベさん…。フォルスさんとパイソンさんが黒こげですが…」
 おそるおそるロビンが呟く。
 3人に気づいたクレーベはしめたとばかりに近づいてくる。
「おぉ。丁度良いところへ来た。俺様は今寒いんだ。何とかしろ」
「それが人にものを頼む言い方かよ」
 ぼそりとグレイが舌打ちする。
「なにぃ!」
 先日の野球勝負の決着がついていないせいか、クレーベはいつになくグレイに敵意を燃やす。
 ロビンは身の危険を感じ、ひそかに立ち去ろうと後ろを振り向くと、そこには、気まずい雰囲気を感じ、後ずさりして立ち去ろうとするルカの姿があった。
「(ル…ルカさん)」
 小声でロビンは呟いた。
「(僕の方を見ないで下さい)」
 ルカは必死に手振りと口ぱくでロビンへ伝えようとした。
「えっ!ル…ルカさん?どうしたんですか??」
 ロビンには何も伝わらなかった。
「(話しかけないで〜)」
 焦るルカになんのことだかわからないと言うようにロビンは首を傾げる。
「なに!!ルカがいるのか!!!」
 クレーベはうれしそうにロビンを押しのけた。
「(はぁたすかった…。)」
 その場で焦げていたフォルスとパイソン及び、その場に居合わせたクリフは、同時に肩を撫で下ろした。

 しかし!

「おい!俺のロビンになにすんだよ!」
 押しのけられたロビンの無様な姿がグレイの勘に触ったようだ。
「(ひぃぃぃぃ〜やめてくださいぃぃぃぃぃ〜)」
 声にならない声で必死に二人をなだめようとするルカ。だが、無常にも事件は起こった。
 グレイはその尋常ならぬ怪力でいつの間にかミラのしもべを片手につかみ、クレーベめがけて投げつけた。
「(ひぃぃぃぃ〜こっちに来る〜っ!)」
 クレーベに捕獲されているルカは恐怖におののいた。
「うるさいぃぃぃっ!」
 一方、クレーベもルカとの再開を邪魔されたことが気に食わない。こんこんと泉が湧き出るライオンの石造をいつの間にやら掴みグレイ目掛けて投げつける。
 だが、この時彼らは重大なことを忘れていた。
 ここは洞窟、彼はノーコン…。
 それに真っ先に気づいたのは、「前歯を失う」という被害にみまわれたパイソンだった。
 とっさにパイソンは洞窟の出口に向かい走り出していた。
 ふと気づくととなりにはフォルスも走っていた。
「フ…フォルス…。気がついたんだね」
「フッ…。もちろんだよ…」
 二人は意気投合し肩を並べて走った。

 さて、二人の投げた石像はどこへ行ったのか。

「おい、お前達。よく見て置けよ。ああいうのが、『ロケット花火が逃げる方向に飛んでいく』…といういい例だ」
 グレイが得意げに言った。 確かに、石像はパイソンとフォルスの逃げた方向へと飛んでいく。
「まるで、追跡型ミサイルのようですね」
 久々に元に戻ったフォルスが逃げながら言う。
「感心してる場合じゃないだろ…」
 肩を並べて走っているパイソンがそっと呟く。
 むなしく逃げる二人の頭上に2体の石像がまるでスローモーションを見ているかのように落ちていく。

「ひぇぇぇぇ」
フォルスとパイソンのむなしい悲鳴が響く。

「だ…大丈夫なんでしょうか…」
 ルカがそっと呟く。
「間違いなく大丈夫では無いと思います」
 ロビンが顔を引きつらせながら答えた。
「いや、あの二人なら大丈夫だろ」
 グレイは何事もなかったように言いながらクレーベに視線を移す。
「とんだ邪魔が入ったがここからは手加減無しだ!!」
 と言いながら、グレイは手をクレーベの方へ突き出した。
「こっ、これはっ…!!」
 石像が2体も壊されたことで、洞窟が崩れはじめているにもかかわらず、誰もがそれに注目した。
「も、もしやよその国で行われているという『けまり』ですかっ!」
 クリフは後ずさりしながら言った。
「サッカーといいたまえ」
 グレイはすかさず訂正を入れた。
「クレーベ!今度こそこれで、正々堂々勝負だ!」
「望むところだ!」
 稲妻が走る。
 稲妻は洞窟の崩壊速度を上げた。
「ひゃーっ!」
 クリフは真っ先に逃げ出した。
 後ろでは、ロビンとルカがひそひそ話をしている。
「あ、あの〜。ルカさん」
「なんですか?ロビンくん」
「クレーベさんって、サッカーに関してもノーコンなんでしょうか?」
「えっ!!」
 なんて恐ろしいことを考えさせるんだとでも言うようにルカの顔が引きつる。
「…」
 その表情を見てやっぱりと思いつつロビンは言葉を無くした。
「に…逃げましょう…」
「はい」
 ルカの意見にロビンは間髪入れずに同意した。
 崩れ落ちる洞窟にはグレイとクレーベ。
 そして、フォルスとパイソンがむなしく横たわっていた。

「オジンガァァァファイィィィブ参上!!」
 ここぞとばかりに2軍落ちの面々が登場した。
「なんで、こんな時に…」
 ますます悪化していくこの状況に、ロビンは絶句した。
「きっとサッカーするには人数が足りんということを察して登場したんだと思います」
 と、ルカは冷静に分析した。
「…出番ないね…」
 洞窟の外より、ティータロボの声。
「ティータロボだけは、一応1軍だよね…」
 なよなよクリフがこっそり突っ込みをした。
 そこへ、
「ちわーす!大ワープ便でぇーすっ!」
 と威勢のいい声がする。
「…だれだよ…この最悪の状況に…」
 いつの間にかロビンの横で競歩していた外伝外初登場のリュートが不機嫌そうに語った。
「いつの間に…」
 ロビンはただただ驚くばかりだ。
「あ!ロビン君」
 大ワープ便の声は、実はボーイだった。
「…ボーイさん。いつも最悪の状況で犠牲者を配達してますね」
「実は、今日もバイトでさぁ。本日はこちらを配達してまいりましたぁ。はんこください」
「崩れ落ちる洞窟に…よく配達なんか…」
 リュートは大変感銘を受けた。
「仕事ですから」
 ボーイはよっぽどお金がいるらしい。
「ところで、本日配達されて来たのは誰なんですか?」
「かっこいいぜ…」
 ボーイの後ろからさらりとカムイが現れた。
「か…カムイさん」
 わざわざ何しにきたんだよ…。
 と、思ったがロビンは口に出すのを止めた。
「俺の中田もびっくりの華麗な守備をご披露するためにわざわざきてやったんだ。ありがたく思えよ」
「は…はぁ…」
 別にロビンには何もありがたくなかった。
「じゃ、俺は帰るから」
 ボーイはさっさと帰ろうとする。
「ま!!まって下さい」
 ルカが急いでボーイを呼び止める。
「僕たちも連れていってくれませんか!!」
「え…!!る…ルカさん…」
 いつになく真剣なルカにボーイは言葉を失った。
「うっうしろ…」
「えっ…」
 ボーイが言葉を失ったのは、ルカの後ろにそびえ立つクレーベの姿のせいであった。
「(このパターンは…)」
 クレーベの手には網がある…。
 今度こそバイトの邪魔をされたくないボーイはすかさずルカの手首をつかんだ。
「!」
「ゲットだぜ!」
 クレーベの網が振り下ろされた瞬間、ボーイはルカを身代わりにした。
 しかし…。
 クレーベの網は予想以上に大きく威力のあるもので、結局ボーイも捕獲されてしまっていた。
 そのことにボーイが気づいたのは、いくら歩いても目先にあるバイト用の軽トラックが近づいてこない…と思った時であった。
「かっこいいぜ…」
 右斜め後方には一人、自分に酔っているカムイがいる。
「るっ…ルカさぁ〜ん…」
 ただ一人の味方を失ったロビンは絶望で泣きそうだ。
「さて、俺たちはメンバーが揃ったぜ」
 クレーベが得意げにグレイを見下ろす。
「オジンガーなんていらねぇよ」
 グレイがぼそりとつぶやいた。
「誰がオジンガーが俺のチームだなんて言ったんだよ」
「どう見たってオジンガーはあんたのチームだろ」
 だって俺のが若いもんなと、グレイは付け足す。
「何だと!!」
「やる気か!!」
 周りを寄せ付けない勢いでにらみ合う二人。
 その間には捕獲されたルカとボーイが震え上がっていた。
 誰もが緊張したその瞬間。
「ぴぃぃぃぃぃぃ〜っ」
 と甲高い笛の音が聞こえてきた。
 またしても勝手に始めているカムイ。
「また勝手に始めてるよ…」
 ボーイが呆れて呟いた。
 回りを見ればいつの間にか、ラムの村サッカー場となっている。
「いつの間にサッカー場に…」
 呆然とするロビン。
「さしずめティータロボかなんかだら」
 南信弁で語りだすクリフ。
「ワープしたんですか…」
 状況が飲み込めてきたルカ。
 コートの脇にはいつの間にか若々しい審判服を着たノーマの姿が…。
 副審は迷いの森にいた賢者のおっさんだ。(名前忘れた。)

「よーし!!行くぞロビン!!」
 グレイが勢いよくボールを蹴り出した。
「えっ!!!」
 ぼーっとしていたロビンは不意をつかれた。
 しかしボールはロビンの横をすり抜けものすごい勢いでクレーベチームのゴールへ突き進んだ。
「よーし!!!先制点!!!」
 グレイがガッツポーズをしたその瞬間、
「三角飛び!!!」
 なんとクレーベゴールのセリカにゴールを阻まれた。
「よし、良いぞセリカ!!」
 クレーベが偉そうにセリカを褒めた。
「セリカ!!逢いたかったよ!!!」
 アルムはうれしそうにセリカに近づいた。
「アルムのばかっ!どうせ、クレーベを破って国王だか世界征服だか最後の敵だかになりたいんでしょっ!勝手になればいいんだわっ!」
 セリカはアルムの戦意を失わせる作戦にでた。
「違うんだセリカっ僕がなりたいのは最後の敵なんかじゃない!スーパーヒーロー主人公だ!」
 しかし、そんなことに動じるアルムではなかった。
「そんなこと、どうでもいいって…」
 みな、このことは1章のラストですでに経験済みなのでうんざりだ。
 そうこうしているうちに、いつの間にかこぼれだまを拾ったボーイが一路ゴールへ向かって突っ走る。
「いかせーん!」
 そこへ立ちはだかるはオジンガー諸君。
「行くぞオジンガーフォーメーション1だ!!」
 マイセンのかけ声と共にオジンガーが集まる。
 バルボがマイセンを肩車し、アトラスとジークが横で手を広げる。
 (もう一人誰だっけ?)
「オジンガーファイブ!!鶴の舞!!!」
 何がやりたいのか分からない。
 あまりの寒さに会場は突然吹雪きだした。
 ズガーーーーーン!!!
 クレーベの怒りはオジンガーを黒こげにした。
 障害物のなくなったグランドをさっそうとドリブルをはじめたボーイだが雪は既に腰まできていた。
 クレーベの怒りに触れたくないボーイは、雪の中でボールを運ぶべく必死にもがいていた。
 しかし、腰まで積もった雪はコンクリートのごとくボーイの周りを固めている。
「!!」
 ボーイがもがいている隙に、黒い影がボーイからボールを奪っていった。
「あっ!あれはっ!!」
 そう、ボールを奪っていった影は、オジンガ―ファイブであることを流風、玄界の二人から忘れられていた影の薄い「ある生物」だった。
「いいぞ!ドーマ!!」
 グレイがパスを受けるべくゴール前へ走る。
「おい審判!!あれは手だろう(怒り)!ファールだ!!」
 クレーベはいつものごとく稲妻を走らせながら、ノーマに詰め寄った。
「うーむ…まぁ『触手』というくらいじゃから…」
「まて!!『触手』は、これだぁぁっ!!今、ボールをけっているのは『足』だぁっ!!」
 アルムはボールを蹴って(?)進んでいるドーマの横を走りつつ、現在使用されていない手足(?)の一本をつまんでみせた。
「ふっ…アルム…さすが、ドーマと戦っただけのことはある。ドーマの手足の見分けがつくとは…」
「…フォルス…(怒り)貴様は俺様のチームだろう!(ズカーン)」
 フォルスはまたしても、怒りを食らった。
「…結局、どうなんでしょうね…」
 ロビンはのんきにルカと立ち話をしている。
「ノーマ!!どうなんだよ!!」
 グレイがノーマに更に詰め寄っていく。
「それは足じゃ!!!ファールではない!!!」
 ノーマはそう言いきった。
「よし!!ドーマ!早く俺にパスをよこせ!!!」
 グレイは再びゴールへ向かう。
「違うわ!!!今ボールを蹴っているのは触手でアルムのつまんでいるのが足よ!!!」
 クレーベゴールからセリカがそう言い放った。
「セリカが言うのなら触手だろ!!!」
 今度はクレーベがノーマに詰め寄る。
「ふ…ファール!!!」
 ノーマはすぐに判定を変えた。
「おい、はっきりしろよ」
 グレイは再びノーマの所へ戻ると指を鳴らす。
 クレーベとグレイの間に挟まれノーマは滝のように汗を流していた。
 そのとき、ノーマ、ふと思いついた。
「イエローカァードッ!!」
 ふところより2枚のカードをちらつかせる。
 しかし、当然のことながら効果がなかった。
 グレイもクレーベもお互いのむなぐらをつかみにらみ合う。
 そこへ、これを止めようと、カムイ、ボーイ等メンバーの面々が一人、二人とやってきてついに乱闘になった。
「今回は味方同士の乱闘でなくてよかったね」
 いつの間にか実況中継の席で高みの見物をしているデューテ。
「そういう問題じゃないだろ…」
 リュートがとなりで突っ込みをいれる。
 そんな中、例のごとくルカ、ロビン逃走を企てようと近づいた。
「ロビンくん、逃げるなら今しかないよ…」
 ルカはこっそりロビンに耳打ちをする。
「はい、今ならティータロボに乗りこめます」
 二人はティータロボをぱくるつもりらしい。
 グレイとクレーベがとっくみあいをしているのを見計らってそっと走り出した。
 が、しかし。ルカは早さの指輪を装備するのを忘れていた。
「ロビンく〜ん、待ってください〜」
 一人先ゆくロビンにルカが訴える。
「ルカさん…」
 ロビンは思わず足を止める。
 なんだかロビンは悲しくなった。
 ルカは必死で走っている…。
 このままでは確実にチャンスを失う…。
 …。
 ロビンはすばやく考えを巡らした。
 さながら、ハリーポッターが最大の敵と戦おうとしている時のごとく。
 ロビンは地面を見た。
 いつの間にか地面には誰かが吹っ飛ばされてできたスジがある。
 ロビンがそのスジをたどって行くと…。
 その先にはひじてつをくらって倒れているフォルスが転がっていた。
 指先には速さの指輪があった。
 (そうか、だからいつも逃げるとき、パイソンとならんで走れるんだ。)
 そういえば、水澤氏がいつも外伝をプレイすると、最終的にフォルスは速さの指輪を装備している。
 ロビンはすばやくフォルスの傍らに駆け寄ると、容赦なく速さの指輪を失敬した。
「(ごめん、後で返すからね…)」
 小声でフォルスにあやまると全速力でルカのもとへと戻った。
 ルカは相変わらず懸命に走っていた。
「(ルカさん!指輪です!)」
「!(ありがとう)」
 ルカが走りながら指輪をはめたとたん、3m先に行ってしまった。
 ロビンもすかさず追いついた。
「この指輪、もしかしてフォルスさんの…?」
「そうです。ちょっと借りてしまいました…。どうしてわかったんですか?」
 ルカはロビンに指輪の一部を示して見せた。
「ふぉるす・ど・ろーず?」
「フォルスさんのお父上は宝石屋さんです。もともと貴族かなにかみたいです」
「えっ!!そうなんですか!?じゃあこんなところにいる人ではないんじゃ…」
「…それは、話せばなが〜くなるんです…(泣)」
 一瞬とても悲しそうな顔をしたルカだったが、それを振り払うように首を振り、
「解放軍の歴史…に関わる話だと思うので…そのうちお話することになるかもしれませんね…」
 とその話を打ち切った。
 今、打ち切られた『なが〜くなる話』の長さは、次回も流風と玄界が握っている。




2へ続く★