集え変人!! 〜サッカーボールにかける情熱〜 その2
「さぁ!!急ぎましょう!!」
早さの指輪を装備したとたんルカは性格まで変わっていた。
いつもののんびりとした雰囲気はなくやけにせかついている。
(せかつくって方言か?つーか玄界氏にも伝わるのだろうか…)
「はい」
しかしロビンは特に気にしていなかった。
その時、必死に走る二人を追い掛ける黒い影があった。
しかし、グレイとクレーベばかり気にしていた二人はその影に気付かなかった。
「ロビン君。もう少しです…!!!!!!!」
ルカは振り返りざまに自分たちの後ろにいる黒い影に言葉を無くした。
「ロ…ロビン君。う…後ろに…」
「…え?」
おそるおそる振り返るロビンに突然黒い影は覆い被さってきた。
「………!!!」
驚きのあまり声のでないロビン。
すると突然黒い影は淋しそうに呟く。
「ひどいよ〜自分たちだけ逃げるなんて…」
何と黒い影はフォルスだった。
「ゆ、指輪装備していないのに〜!?」
腰を抜かすルカ。
「ロビンに覆い被さるなんてゆるさ〜ん!!」
獣の勘でロビンに覆い被さる事件を嗅ぎ取ったグレイが3人目掛けて突進してきた。
「逃げるきかぁぁぁ!!」
グレイの後方から、すさまじい音を立てて襲いかかってくるクレーベ。
その後方からは、乱闘の集団までもが徒党をくんでやってくる。
「ひぃぃぃ〜」
あまりに恐ろしい光景に思わずフォルスを盾にするロビン。
「こ、こうなったらなんとしてもティータロボを乗っとりましょう!!」
指輪効果で性格がせかついているルカはコメントも言い終わらないうちにティータロボへ向かって走り出した。
「るっ、るかさん!?」
ロビンは唯一の味方(というより同じ境遇の仲間)に置いていかれないよう、とりあえず全力でルカについていく。
「ま、まって〜」
情けない声でロビンにしがみ付き、引きずられながらついていくフォルス。
なんとか3人はティータロボまで逃げ切った。
真っ先についたルカがティータロボの前で一言…。
「どうやってのっとるんだろう…」
「………」
全員が絶句した。
すると、近くの客席にいたデューテが野次を飛ばす。
「なにやってんのよ〜?鼻からはいればぁぁ〜?」
何かを期待しているデューテ。
「そ、そんなこと言われても…」
戸惑うロビン。
「デューテサン…いつぞやの時のように性格がきつくなってますね…」
フォルスこんなときにも余計な突っ込みをする。
「きっと誰かに操られているんですよ。あの時みたいに」
と、ルカが弁護する。
そんな会話をしている間にも後ろからは迫り来るグレイ、クレーベ等。
「我が内に眠りし…裁きの光よ…。目に物みせてくれたまえ!オーラ、オラ」
突然、デューテがティータロボに向かってオーラを投げつけた。
「変な呪文…」
俺は絶対そんな変な呪文の魔法は使わん。隣でちょっとナルシストフォルス病気味なリュートは思った。
オーラは見事的中し、ティータロボが突然変な音を立てはじめた。
「きゅいいいいいい〜ん」
ティータロボの鼻が掃除機のように吸引を始めた。
「うわぁぁぁぁ!!」
みるみる内に、ルカ、ロビン、フォルスはティータロボの鼻に吸い込まれていく。
「この野郎!!!!ロビンをどこに連れて行く気だ!!!」
グレイがティータロボに向かって怒鳴りつける。
しかしロボット化されたティータはひるむことはなかった。
気の短いグレイはティータロボに跳び蹴りをくらわせた。
「が〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!」
辺りに鈍い音が響き渡る。
「いで〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
グレイの足に肘をぶつけた時のようなじ〜んとした嫌な痛みがびりびりと伝わる。
「ティータロボは超合金でできているのだ」
突然ジークが偉そうに語り出す。
「お前のような若造に倒せる代物ではない!!!!!!」
そう言い終わるのと同時にジークはグレイに殴り飛ばされどこかに消えた。
その様子を見ていたクレーベがここぞとばかりに怒りをティータロボの頭上に落とした。
じじぃ、じじぃぃ。
クレーベの怒りをうけた電化製品のティータロボは、マイセンやノーマを呼んでいるかのような音をたててちょっとショートした。
そのころ、ルカ、ロビン、フォルスの3人はいつの間にかティータロボの操縦席に座っていた。
「ひぃぃぃ!グレイと隊長が協力しとるぅ〜!!」
フォルスはびびってそのへんのボタンをおしまくった。
「えぇぇぇぇ!?」
ルカとロビンも状況を少しでも良くしようと近くにあったレバーをひいた。
じじぃ、じじぃぃ。
またしても、ティータロボはちょっとショートしながら動き出した。
「ひぇぇぇ!!」
そろって声をあげる3人…。
そのころ外では、クレーベの怒りを受けながらも動き出すティータロボに、グレイはふかく感慨をうけていた。
「う〜ん。オジンガーにはもったいないな。俺の足にするべきだ」
それを聞いたクレーベは再び怒りをティータロボに落とした。
じじぃ、じじぃぃ…。
ティータロボはついに全身の関節から煙が吹き出してきた。
「おい!!何するんだよ」
グレイはクレーベに向かって怒鳴る。
「お前にこそもったいないだろう。これは俺が頂く。もちろんなかのルカも一緒だ!!!」
クレーベは偉そうに言う。
「それを言うなら俺だって中のロビンごとこのロボを奪うぞ!!!」
回りは既に何もしゃべる気力がなかった。
その様子をティータロボの中のモニターで見ていた3人も同じ気持ちだった。
すると突然ティータロボが暴走しだした。
「!!だいじょぶか!!ルカァァ!!」
自分で怒りを落としたクレーベだったが、そのことは無視してティータロボ右の二の腕によじ登り始めた。
「!」
クレーベに続いてグレイがティータロボ左の二の腕をよじ登り始めた。
暴走したティータロボはおもむろに足を動かし、忘れ去られていたサッカーボールへ向けて親指を発射した。
ものすごい勢いで発射された右足親指はサッカーボールをふっとばし、正面のゴールに突き刺さった。
…というより、キャプ○ン翼のようにゴールを突き破った。
………。
一瞬みな静まり返ってゴールを見る。
ビィィィィ。
審判だったことを思い出したノーマはとりあえず笛を吹いた。
「やりぃ!1点いただきだぜ!」
グレイ喜びのあまり思い切りティータロボ左の二の腕をたたいた。
すると、突然ティータロボは両腕を高く掲げ間接からしゅうしゅうと音を立て始めた。
その様子はまさにロケットパンチが出るかという勢いだった。
その場にいた全員は1秒でも早くグレイとクレーベをどこか別の世界に飛ばしてほしいと必死に願った。
「お…おい。なんだよ!!!」
グレイが焦ったようにティータロボに渾身の力をこめた蹴りとパンチをお見舞いした。
じじじぃ…じじぃ…。
全員の期待もむなしくテーィタロボは淋しそうにそのまま動かなくなった。
「なんだよ、びびらせやがって!!」
グレイがほっと胸をなで下ろす。
グレイとは対照的にその場にいた全員はがっくりと肩を落とした。
そんな一部始終を静かに見つめていたクレーベは、ここぞとばかりに一人むなしくゴールの笛を吹いていたノーマに怒りを落とした。
「ふひゅぅぅぅ〜」
怒りを落とされたノーマ、黒焦げで気を失いつつも気の抜けた笛を吹きつづけている…。
「まぁ、とりあえず1点ゲットだぜ!」
壊れたティータロボから飛び降りたグレイが、満足げにうなずいた。
みんな、一瞬ティータロボの中に3人の乗組員がいることを忘れた。
「る、るかさん、チャンスです!(今度こそ)」
しかし、ルカは恐怖におびえた。
考えてみれば、ここにはフォルスがいる…。
クレーベが(やつあたりで)怒りの標準をフォルスに向けるのはあきらかだ…。
時間の問題だ…。
「すぐ、隊長にばれますよ…(泣)」
ルカは、ロビンをひっぱって、急いでティータロボから脱出した。
「二人とも〜。どこへ行くんだ〜」
フォルスが淋しそうにルカとロビンを呼ぶ。
二人がティータロボから飛び降りると、待ってましたとばかりにクレーベは怒りを落とした。
「がげごごぉぉぉ……」
おとなしかったティータロボが突然訳の分からない言葉を発した。
ちなみに中にいたフォルスは気絶している。
「おぉぉ…ティータぁぁぁ」
ジークが今更ながらティータロボの様子に涙する。
「なんだか凄いことになっちゃいましたね…」
ロビンがぼそりと呟く。
「元は僕らが悪いんでしょうか」
ルカはがっくりと肩を落とした。
そんな中、ジーク&オジンガーの面々はティータロボに涙しているため、グレイチームにはそれなりのすきが生まれている。
「よし!今だ!!」
クレーベがボールに稲妻をまとわりつかせキックする。
ボールはものすごい勢いで飛んでいく。
「ああ…なんか、ボールに稲妻まとわりついてますけど…」
本来ボールの行く手を阻むべきロビンであったが、恐ろしきボールの勢いに、迷わず無視した。
「そういえば、ゴールキーパーって誰だっけ?」
のんきにアルムがとなりで納豆を食っている。
「それどころか、誰が味方なんだかもう全然わからんな」
ボーイは今月のバイト時間を計算しながら言った。
「あ!そういえば、キーパーって確か…!」
ロビンは不意に思い出した。
そして、アルムとロビンは同時に言う。
「クリフ!!」
ボールは相変わらず人を寄せ付けない勢いでゴールへ向かっている…。
「ひぇぇぇぇぃ…なんでオレがぁぁぁ」
クリフのなよなよ度は145.2%に達した。
「クリフ!!!てめぇとめろよ!!!止めなかったらどうなるか分かってるんだろうな〜!!」
グレイが無理を言う。
「ひぇぇぇ」
クリフに逃げ道は無くなった。
「たすけてぇぇぇぇ〜」
ボールはまっすぐクリフめがけて飛んでくる。しかし逃げればグレイに秒殺だ。
「ひぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ついにボールがクリフに命中。そしてクリフ共々ゴールネットを突き破り空の彼方へ消えていった。
「よっしゃぁ!!!ゴ〜ルだぜ!!!」
クレーベは一人拳を高く掲げた。
「クリフ。お前の死は無駄にしない」
グレイが空に向かって言葉を投げた。
「ああクリフ。お前はなよった奴だったよ」
その横でアルムも淋しげに目を閉じた。
「まだ死んで無いでしょ?」
ロビンの問いにルカは目を伏せた。
ぴぃぃぃ〜〜〜〜。
クリフが死んでいようがいまいが関係なくノーマが笛を吹く。
気付けば試合終了時間まであとわずかだった。
前半終了と後半開始のハーフタイムは、ティータロボ事件のため、いつの間にか終わっていたようだ。
「なんだか知らんが、もうロスタイムのようだな」
いつの間にやら解説役のリュートが何者かに操られたように言った。
「わーぁ!わかりやすい説明!!」
デューテもなんだか怪しげだ。
「なに!もうそんな時間か!!」
まだ試合が終わっていないのにそそくさと帰りだすオジンガー諸君。
「まだ試合は終わっていない!!ボールは活きている!!!みんな俺に続け!!」
グレイが某C翼の台詞をさわやかにぱくった。
しかしグレイの後についてくる者は居なかった。
そんなグレイの前にクレーベが立ちはだかる。
「勝負だ!!」
「望むところだぜ!!!」
グレイとクレーベの間に火花が散る。
既にグラウンドには審判のノーマすらいない。
いや!!もう一人いた!!!
カムイがゴールポストの上でなぜかバットを持って立っている。
「カッコイイゼ…」
「カムイ…かっこいいぜ!!」
レオが客席でイスの上に立って大声援を送った。
「ラムの村の皆様!!ソフィア市長選挙には、カムイ、カムイをよろしくお願いいたします!!」
レオはリュートからマイクをひったくり選挙活動を始めた。
「票が得られんと供託金没収だもんねぇ」
デューテが呆れ顔でレオを見ながら言った。
「その前に、こんなところで選挙活動していいのか…?」
リュートは少し心配そうだ。
「それより、サッカー場にバット持ち込んでもいいのか?」
レオ達が乗ってきた選挙カーの運転手のセーバーがいぶかしげに言う。
そこへ、避難訓練をしているかのような勢いで現れたパイソン、レオからマイクをひったくっていう。
「カムイ!逃げろ〜!!死んだら市長になれんぞー!!」
「かっこいいぜ…」
カムイは動く様子がない。
「なにもここまで来てイチローをしなくても…。ベッカムとかあるじゃん。」
デューテがもうなんともいえんわ、という感じで言った。
「熱血野球人なんだからしょうがないよな…」
リュートも投げやりだ。
そんな中、クレーベ、グレイが激しいボールの取り合いをしていた。
「はっ、はっ、はっ〜。俺ば、リーダーたい!」
サッカー場の中央左上にアルムが九州弁でいう。
「リゲル男児みせたるたい!とぉ〜ちゃ〜ん!!」
アルムが大声で叫ぶとアルムの後方、すなわちサッカー場中央左上ですざましい轟音とともにゴールポストが浮上した。
「げー!!国の税金使ってゴールポストつりやがった…」
グレイがボールを蹴りながらいった。
「しかーも、おいどん、ここに本物のボールもっとるたい。そっちは偽者たい!はーっ、はっ、はーっ!」
といってアルムは後ろのゴールポストにシュートした。
すでに、グレイ、クレーベの取り合っていたボールがアルムの策略により、縮んでふにゃふにゃになっている。
ごごごごご…。
クレーベの怒りは例のごとく頂点に達した。
雨がいきなり滝のごとく降り出す。
「中止〜。中止〜」
リュートがいなくなったノーマの代わりにマイクでいった。
残っていた数少ない人々もすばやく帰りだした。
「おーい、カムイー!!帰るぞ〜。たった今アルムが国の税金を私的に流用したから、市長選にも望みが出てきたしな〜」
セーバーが親切にもマイクで声を掛ける。
「かっこいいぜ…」
しかし、カムイは無視した。
おわり
外伝外リレー小説第2弾です。ますます訳が分からなくなってきましたねぇ。ここまで来ると元ネタ知っててもついて来れませんね(爆)しかも最初書き始めたの冬ですよ!!実に半年(以上??)かけての大作ですから(笑)最後は最近話題の選挙入っているし。まぁせっかくなので次回は選挙にしよう、ということになっています。
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